下準備の大切さ
TV撮影のときにディレクターさんの一言が凄く考え深かったので
ちょっと何をどう思ったのか書いてみます。
準備と段取りがさすがですね!
僕は『準備』というものを大切にしています。
それは初めて社会人として仕事をしたオテル・ドゥ・ミクニの
三國清三シェフがあってこそ身に付いたものです。
ミ・ザン・プラス (mis en place)
フランス語で下準備をミザンプラスと言います。
分解すると以下のようになります。
mis(置く・身に付ける) en place(場所・スペース)
この3つに単語に分けられます
真ん中の en は前後をくっつけるんですが『所定の場所に置く』
物事をしかるべき状態で準備をする
このような意味になります。
料理をするにあたり、準備をしておくということは非常に大切です。
実際に調理が始まるまでの小さな物事を終わらせておくからこそ、いざ!営業中の戦場のような調理場で戦うことができます。
高校生のときからミクニの厨房に出入りしていたので、その統一感と言うか規律というものを身をもって感じていましたが社会人になり正式に社員として入社をすると、その規律は更に厳しいものになりました。
準備が間に合わないと戦えない
料理が苦手な方、いまいち時間がかかってしまう方に役立つ内容かなぁと思います。なぜなら、そいう方は『下準備』不足というものが原因の一つに考えられるからです。
料理を美味しく作るために味付けや技術的な事は当然ながら必要なことですが、その前段階、どれだけ下準備ができているかということでも、料理の仕上がりは大きく変わってきます。まずは下準備をきちんと行うことが美味しい料理を作るために必要なことです。
あれがない!これがない!どこだ!?
準備をしておかないと、途中でこのような状態になっていしまいます。
そうすると時間が止まってしまったり、探している間に料理が焦げてしまったり、思いも付かないことが起こる可能性があり、その出来事に対して面倒に感じでしまうことで料理が好きになれないという方もいます。
僕がミクニの厨房、特に洗い場時代の話ですが、そのときはもう朝から晩まで諸先輩の準備に没頭をする毎日でした。
ミクニの洗い場はお皿を洗う場所が厨房と通路を隔て曇りガラスで見えない作りになっています。なので実際に見ることができない状態なんです。
だから『空気を読む』感覚が鍛えられました。
お皿を洗うだけでなく、厨房の鍋や先輩の使う道具など全てを準備、管理します。朝一6時には店に行き、銅鍋50個くらいを全部ピカピカに磨き直しをします。先輩が使うまな板やダスターを準備します。僕の場合、早く厨房で仕事がしたかったので前日に先輩から仕込みに必要なものを聞いておきます。もし大量に茹でるものがある場合は寸胴鍋でお湯を沸かしておいて蓋をして保温をしておきます。そうする事で先輩が厨房に来た際にお大量のお湯を沸かすという時間が削減でき、直ぐに仕込みに取り掛かれます。
必要な道具も仕込みから想像できるものを準備しておく。食材もバットにのせてまとめておく。先輩の準備をすることで自分が仕込んている感覚を身に付けていました。
三國シェフの徹底ぶりを研究する
僕はシェフが好きすぎる変態だったので観察ばっかりしていました。
あの料理が入ったらアレを準備して、この順番で・・・みたいに自分の仕事をしながら横目で常に見ていました。
その三國シェフが良く口にした言葉が『プレパレ』そして『ミザンプラス』です。プレパレは『プレパレーション』といって事前に調理の一部を行う調理作業、つまり仕込みなんですが、この徹底をしていました。
そして、それらをすべて含んだ整理整頓です。
冷蔵庫の中は取り出しやすいように常に同じものが同じ向きにあり、まな板は決められた場所に設置し、必要な道具は手元に置き、ダスターは丸めてまな板の横に付けて置き、鍋やフライパンは大きなものの中に順に小さなものを入れて置き柄は全て一直線上に同じ方向にそろえておく。
これがどんなに荒れた厨房でも、この状態を保ち続けます。
これは本当に至難の業です。
僕はこれをどうすれば出来るのかを考えて実践し、失敗し、また実践しと繰り返し繰り返し行っていました。そうする事でシェフの考え方や行動パターンに近くなってきて仕事がしやすくなりました。が故に、シェフの近くで仕事をさせていただいたのだと思っています。
準備を徹底することで見えてくるもの
先にも書きましたが、僕はミクニの厨房で変態と言われていました。シェフの考えていること、そこから先を読んで準備をしておくという行動がとれるようになっていました。そして全てにおいて徹底をしました。洗い物、鍋磨き、ゴミ置き場、与えられる仕事は下っ端の代表的な仕事の意味を徹底的に考え、心がけ仕事に取り組みました。
仕込みの前に必要なものを準備しておく
オープンまでに全ての準備をしておく
片付ける前に必要なものを整えておく
こうすることで、仕込みを始めるとき、営業が始まるとき、片付けするとき、全てにおいて心に余裕ができます。
『準備ですべてが決まる』 『はじめが肝心』
このように言われるように『準備』の制度によって結果も過程も大きく違ってきます。この考えが持てることで仕事への取組み変わりました。
僕の場合、洗い場という立場のときに、先輩の仕込みの順番や手順などを見て盗み、見えないところでメモをしていました。そして先輩が忙しかったり人手が足らくなった瞬間に必要なものをさりげなく置いておく。
こうすることで『おっ!』と思わせることができます。
これがチャンスで絶好のタイミングなんです。
観察をしていたから自分でチャンスと思うことができます。他の人たちに見えない小さなチャンスが見えた瞬間に、いつでも飛びつけるような『準備』をしておく!それを繰り返すことで大きな信頼になって帰ってくる
準備を徹底する。非常に大切なことです。
だから撮影をする際にも3分間クッキングではないですが、色んな場面を想像し下準備をしておきます。ハギスを取る際にも取りたい映像というものがあると思います。
・内臓のミンチ
・袋に詰めるところ
この2つは確実に撮りたいだろうなと。そして完成形とかの単体の撮影もあるのですでに出来上がっているものも必要です。なのでミンチを詰めているときには既に茹で上がったものがあり、直ぐに場面を変えられる。袋詰めして茹でてたら1時間近くかかっちゃいます。撮影時間は限られています。アナウンサーさんが来て実食も考えてさらに2個多めに準備しておく。そのための各段階をどの様にと撮られてもいいように準備をしておく。だからスムーズに撮影も進みます。準備が出来ているので少し別方向に振られても焦りません。そこも想像しておきます。
全て、ミクニでの撮影のときに得た技術です。これは繰り返し繰り返しやることで習得が出来るものです。
それが、今回のTV撮影に活きた。
その結果、ディレクターさんから『準備と段取りがさすがですね!』の一言。
「準備とは、言い訳を排除すること」
イチロー選手に学ぶ準備
- 結果は本番前に決まっている
- 準備とは「言い訳を排除する」こと
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本番に強い人に共通する「習慣」
- 心と体を万全に整える
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仕事のルーティンを疎かにしない
イチロー選手は全てがルーティーンであり、どれも疎かにはしません。そしてこのように言っています。
「次の日の試合に向けて自分ができるすべての準備をしています。全部の打席でヒットを打ちたい。同じことをずっと、ずっと繰り返しています。これが僕の考えであり、僕のやり方です」
準備をすることでいつも同じ状態を保ち、同じ状態で試合に臨む。これを繰り返しているそうです。天才と言われるイチロー選手の努力の凄さはTVで放送されたり書籍にもなっています。準備が出来ているからパフォーマンスを維持したり、更に良く出来るものです。
僕も三國シェフに、準備への考え方、取り組み方を、教えてもらえていた環境に感謝をし仕事に活かしていきます。